障害年金のご相談では、
「がんの治療中にうつ病を発症した場合も、障害年金の対象になりますか。」
「がんの治療は続いていますが、精神症状が強く働くことができません。」
「精神科を受診した日が、障害年金の初診日になるのでしょうか。」
というご質問をいただくことがあります。
がんの告知や治療、再発への不安などをきっかけに、うつ病などの精神疾患を発症することがあります。
精神疾患によって日常生活や仕事が制限され、障害の状態が認定基準に該当する場合は、障害年金を受けられる可能性があります。
ただし、がんの治療中に精神疾患を発症した場合は、がんそのものの症状、治療による副作用、精神症状が重なっていることがあります。
また、がんと精神疾患との医学的な関係によって、障害年金で確認する初診日が異なる可能性があります。
今回は、がんの治療中にうつ病などの精神疾患を発症した場合に、障害年金を検討するときの確認事項についてご紹介します。
がんの治療中に発症したうつ病も障害年金の対象になる可能性があります
がんの告知を受けたことや、手術、抗がん剤治療、放射線治療などを続けるなかで、気分の落ち込み、不安、不眠、意欲の低下などが現れることがあります。
精神科や心療内科を受診し、うつ病などと診断される場合もあります。
うつ病によって日常生活や仕事が制限され、障害の状態が認定基準に該当する場合は、障害年金を受けられる可能性があります。
ただし、うつ病と診断されていることだけで、障害年金を受けられるかどうかや障害等級が決まるわけではありません。
治療を続けている状態で、食事、入浴、外出、人との関わりなどの日常生活や、仕事がどの程度制限されているかが確認されます。
診断名と治療経過を確認します
がんの治療中に精神的な不調が現れた場合、うつ病だけではなく、適応障害や不安障害などと診断されることがあります。
障害年金では、診断名や病態によって認定上の取扱いが異なります。
適応障害や不安障害などは、認定基準上、原則として認定の対象にならない神経症として取り扱われることがあります。ただし、臨床症状から判断して精神病の病態を示している場合は、その病態に応じて取り扱われることがあります。
また、治療を続けるなかで、適応障害からうつ病などへ診断名が変わる場合もあります。
これは、障害年金を申請するために診断名を変更してもらうということではありません。
現在の診断名だけではなく、これまでにどのような症状が現れ、どのような診断や治療を受けてきたのかを主治医へ伝え、現在の状態について医学的な判断を確認することが大切です。
がんの症状や治療による影響も確認します
がんの治療中は、病気そのものの症状や治療の副作用と、精神疾患による症状が重なって現れることがあります。
例えば、
・がんや治療の影響による倦怠感で、起き上がることが難しい
・治療後の体調不良により、外出や家事ができない
・気分の落ち込みや意欲の低下により、食事や入浴ができない
・再発への不安が強く、眠ることや人と話すことが難しい
といった状態です。
どの症状ががんによるもので、どの症状が精神疾患によるものかを、ご本人だけで明確に判断することが難しい場合もあります。
障害年金を検討するときは、がんの症状や治療による影響と、精神疾患による症状を可能な範囲で整理します。
あわせて、がんの治療を始めてから現在までの経過、精神症状が現れた時期、その後の日常生活や仕事の状況を確認することが大切です。
がんと精神疾患の関係によって初診日の考え方が異なります
障害年金における初診日は、障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。
がんの治療中にうつ病などを発症した場合、がんについて初めて受診した日と、精神疾患について初めて受診した日が異なることがあります。
がんと精神疾患が別の傷病として取り扱われる場合は、精神科や心療内科などで精神的な不調について初めて診療を受けた日が、精神疾患の初診日となることがあります。
一方、精神科などを受診する前から、がんの主治医へ不眠や気分の落ち込みを相談し、薬の処方などを受けている場合もあります。
また、がんと精神疾患の間に医学的な相当因果関係が認められるかどうかによっても、初診日の考え方が異なる可能性があります。
そのため、精神科を初めて受診した日が必ず初診日になるとは限りません。
まずは、
・がんについて初めて受診した時期
・がんの治療を始めた時期
・精神的な不調が現れた時期
・最初に精神的な不調を相談した医療機関
・精神科や心療内科を受診した時期
・それぞれの医療機関で受けた診断や治療
を確認します。
▶ 障害年金の初診日はいつ?初診日が分からない場合の確認方法
日常生活への影響を確認します
精神疾患による障害年金では、症状によって日常生活がどの程度制限されているかが確認されます。
がんの治療中にうつ病を発症した場合、気分の落ち込みや意欲の低下に加えて、がんの症状や治療による体調不良が生活に影響していることがあります。
例えば、
・食事を用意できず、ご家族に準備してもらっている
・声をかけられなければ、入浴や着替えができない
・一人で通院することが難しい
・薬や診察の予定をご家族に管理してもらっている
・不安が強く、一人で過ごすことが難しい
・治療のない日も横になって過ごしている
といった状態です。
現在できていることだけではなく、ご家族などから受けている援助や、体調を崩さないために控えていることについても整理することが大切です。
休職中や傷病手当金を受けていても申請できます
がんや精神疾患の治療により休職し、傷病手当金を受けている場合でも、障害年金を申請することはできます。
ただし、同一の傷病を理由として、同じ期間について傷病手当金と障害厚生年金などを受ける場合は、傷病手当金の支給額が調整されることがあります。
がんを理由に傷病手当金を受け、精神疾患について障害年金を申請する場合でも、両者の医学的な関係によっては同一の傷病として取り扱われる可能性があります。
傷病手当金を受けていることだけで障害年金の対象外になるわけではありませんが、それぞれの給付の対象となった傷病と受給期間を確認することが大切です。
働いていても障害年金の対象外とは限りません
がんや精神疾患の治療を続けながら働いている場合でも、それだけで障害年金の対象外になるわけではありません。
働いている場合は、仕事内容や勤務時間のほか、欠勤や休職の状況、担当業務の制限、職場で受けている配慮などが確認されます。
治療日に合わせて休みを取っている、勤務時間を短くしている、負担の少ない業務へ変更してもらっている場合もあります。
また、職場では何とか働くことができても、帰宅後や休日は横になって過ごし、食事や入浴などの身の回りのことを行えない場合があります。
働いているという事実だけではなく、どのような配慮を受けながら仕事を続けているのか、仕事と治療によって日常生活にどのような影響が生じているのかを確認することが大切です。
▶ 働いていると障害年金はもらえない?就労中に確認されること
精神科や心療内科の主治医へ普段の状況を伝えます
障害年金の診断書は、主治医が診察内容や治療経過などに基づいて作成します。
診察室での受け答えだけでは、家庭で受けている援助や、仕事を続けるために受けている配慮が十分に伝わらないことがあります。
また、がんの症状や治療の副作用と精神症状が重なっている場合は、ご本人が困っていることをうまく説明できないこともあります。
そのため、
・日常生活でできなくなったこと
・ご家族などから受けている援助
・休職や欠勤など仕事への影響
・職場で受けている配慮
・がんの治療経過や体調への影響
について、普段の診察で伝えておくことが大切です。
ご本人だけで説明することが難しい場合は、ご家族から見た様子を書面にまとめたり、診察に同席して伝えたりする方法もあります。
当事務所では、日常生活や仕事の状況を整理するための「困りごとシート」をご案内しています。
がんの治療中に精神疾患を発症した方へ
がんの治療中にうつ病などの精神疾患を発症した場合も、日常生活や仕事への影響が認定基準に該当すれば、障害年金を受けられる可能性があります。
一方で、がんの症状や治療の影響と精神症状が重なっている場合や、精神科を受診する前からがんの主治医へ不調を相談している場合があります。
そのため、
・現在の診断名と治療経過
・がんについて初めて受診した時期
・精神症状が現れた時期
・最初に精神的な不調を相談した医療機関
・がんと精神疾患との医学的な関係
・日常生活や仕事への影響
を確認することが大切です。
「がんと精神疾患のどちらについて申請を考えればよいか分からない。」
「初診日がいつになるのか分からない。」
「体の症状と精神症状をうまく説明できない。」
そのような段階でもご相談いただけます。
現在分かっていることから、これまでの受診経過や生活状況を一緒に整理します。
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