障害年金のご相談では、
「高次脳機能障害は障害年金の対象になりますか。」
「身体は動かせますが、記憶や判断に障害がある場合も申請できますか。」
「本人が困っていることを説明できない場合は、どうすればよいでしょうか。」
というご質問をいただくことがあります。
高次脳機能障害は、障害年金の対象となる障害の一つです。
ただし、高次脳機能障害と診断されていることだけで、障害年金を受けられるかどうかや障害等級が決まるわけではありません。
記憶、注意、判断、行動などへの影響や、日常生活や仕事で受けている援助をもとに、障害の状態が確認されます。
今回は、高次脳機能障害で障害年金を検討するときに確認したいことについてご紹介します。
高次脳機能障害は障害年金の対象になる可能性があります
高次脳機能障害は、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、頭部外傷などによる脳の損傷によって生じることがあります。
障害年金の認定基準では、高次脳機能障害は「症状性を含む器質性精神障害」に含まれます。
高次脳機能障害によって日常生活や仕事が制限され、障害の状態が認定基準に該当する場合は、障害年金を受けられる可能性があります。
認定基準では、高次脳機能障害の主な症状として、失語、失行、失認のほか、記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などが挙げられています。
検査結果だけではなく、これらの障害によって日常生活や社会生活にどのような制約が生じているのかを確認することが大切です。
外からは障害が分かりにくいことがあります
高次脳機能障害は、身体の動きや会話に大きな問題がない場合、周囲から障害が分かりにくいことがあります。
受け答えができていても、少し前に聞いたことを覚えていない、複数のことを順番に行えない、状況に応じた判断が難しいといった支障が生じることがあります。
また、感情を抑えることが難しくなったり、以前とは行動や性格が変わったように見えたりする場合もあります。
障害年金では、診察室での受け答えだけではなく、家庭や職場などで実際に生じている支障を確認する必要があります。
原因となった病気やけがの初診日を確認します
障害年金における初診日は、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。
高次脳機能障害と診断された日が、必ず初診日になるわけではありません。
脳梗塞や脳出血によって高次脳機能障害が生じた場合は、その原因となった病気について最初に診療を受けた日を確認します。
交通事故や転倒などによる頭部外傷が原因の場合は、けがをして医療機関を受診した日などから受診の経過を確認します。
初診日によって、障害基礎年金と障害厚生年金のどちらを請求することになるのか、保険料納付要件を満たしているかなどが変わります。
まずは、原因となった病気やけがの発生から現在までの受診歴を振り返り、初診日と初診の医療機関を整理することが大切です。
▶ 障害年金の初診日はいつ?初診日が分からない場合の確認方法
身体の障害を伴う場合があります
高次脳機能障害とともに、手足のまひや歩行の障害、言語の障害などが残ることがあります。
障害年金の認定基準では、脳の器質障害について、精神障害と神経障害を単純に分けることが難しいため、原則として諸症状を総合し、障害の全体像から判断するとされています。
身体の障害の状態によっては、精神の障害用診断書に加えて、肢体の障害用など別の診断書が必要になることがあります。
使用する診断書は請求内容によって異なるため、主治医へ依頼する前に確認することが大切です。
日常生活で受けている援助を確認します
高次脳機能障害による障害年金では、日常生活をどの程度一人で行えるかが確認されます。
身の回りのことができているように見えても、ご家族が予定や金銭、服薬を管理し、必要な手続きを代わりに行うことで生活が保たれている場合があります。
また、高次脳機能障害では、ご本人が発症前からの変化や、現在の生活上の問題を十分に認識できないことがあります。
ご本人は「特に困っていない」「一人でできている」と話していても、実際には、ご家族や支援者による見守りや援助が必要な場合があります。
そのため、ご本人から聞いた内容だけではなく、ご家族や支援者から見た普段の様子も参考にしながら、どのような援助を受けているのか、援助がなければ一人で行えるのかを整理することが大切です。
働いていても障害年金の対象外とは限りません
高次脳機能障害があっても、働いていることだけで障害年金の対象外になるわけではありません。
働いている場合は、仕事内容や勤務時間のほか、作業内容の制限、職場での声かけや見守り、欠勤や休職の状況などが確認されます。
決められた作業はできても、新しい仕事を覚えることや、予定の変更に対応することが難しい場合があります。
仕事を続けられているという事実だけではなく、どのような配慮や援助を受けているのか、一人で安定して仕事を行えているのかを確認することが大切です。
▶ 働いていると障害年金はもらえない?就労中に確認されること
主治医へ普段の状況を伝えます
障害年金の診断書は、主治医が診察内容、検査結果、治療経過などに基づいて作成します。
短時間の診察だけでは、家庭や職場で生じている問題や、周囲から受けている援助が十分に伝わらないことがあります。
そのため、記憶や判断、行動の変化、日常生活で受けている援助、仕事への影響について、普段の診察で伝えておくことが大切です。
ご本人だけで説明することが難しい場合は、ご家族が診察に同席したり、普段の生活状況を書面にまとめて主治医へ渡したりする方法もあります。
当事務所では、日常生活や仕事の状況を整理するための「困りごとシート」をご案内しています。
ご家族からご相談いただくこともできます
高次脳機能障害により、ご本人が障害年金の制度を理解することや、これまでの経過、現在の生活状況を説明することが難しい場合があります。
そのような場合は、最初にご家族からご相談いただくこともできます。
原因となった病気やけが、これまでの治療経過、現在の日常生活や仕事の状況、ご家族などが行っている援助について、分かっていることから一緒に整理します。
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